東南アジアの⾷に関するコラム

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黄金の三角地帯:麻薬から珈琲豆への転換

2023.06.16
2023年14号コラム
黄金の三角地帯:麻薬から珈琲豆への転換

数年前、私は黄金の三角地帯に位置するタイのドイトン・コーヒー生産地を訪れていた。ご存じの通り、黄金の三角地帯とは、ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナムを含めた、古くからケシ等の麻薬栽培が盛んであった地域だ。1988年にタイでは「ドイトン計画」によりケシ畑を珈琲園やマカデミア農園に転作する政府支援が開始され、今ではケシ栽培のほとんどが撲滅した。
  チェンライの町中は、どこに行っても洒落たカフェが多く、レンタルバイクで回っている間にもちょっと疲れると、カフェで一杯と一息がつけるのが嬉しい。仏教寺院や、仏像などの観光資源も豊富で、楽しいし、夜にはタイ料理の屋台が囲む広場の中央で伝統ダンスの催しが開催されている。これは、タイ本来の伝統文化と、「珈琲」が代表する西欧文化が見事に合体し、融合している。
黄金の三角地帯:麻薬から珈琲豆への転換

ドイ・チャーン・コーヒーの生産工場は、町からタクシーに乗って1時間程度の山頂にある。政府援助が入ったためか、広大な敷地に大きな機械が数十台置かれ、タイ北部民族の貧しい若者の雇用が確保されていた。若い娘が、大きな籠に入れた珈琲豆の選別も非常になれた手つきで、迅速に行われていた。これだけ機械化し、人員も豊富に投入されたら、周辺地域との量・質の能力格差は極めて大きいだろうなと感じながら、同社の珈琲を試飲してみた。確かに、美味しい。この味に到達するためには、きっと多くの人の英知を結集させて、厳密に合理化、品質管理されたに違いない。
黄金の三角地帯:麻薬から珈琲豆への転換

インドネシア、ベトナム、カンボジアの珈琲豆はそれぞれ特有の品格を有していて、どれが良いということはない。最終的には飲む人の好みの問題だと思う。ドイトン珈琲もまた独自の特長を兼ね備えた「逸品」だと思われる。私は、これを、もっと日本人に紹介して、同地の暗い過去に鑑みれば、その社会的意義からも更なる消費を促したいものだと思った。