東南アジアの⾷に関するコラム



魅惑の南国料理、尽きない魅力
2023.06.27
2023年22号コラム
南十字星は、日本だと南国情緒豊かな沖縄あたりの夜空に映える。かつて、数年間フィリピンのミンダナオ島に暮らしていた時、当地に住む「熱帯農業の神様」と尊敬する日本人の方からある晩、この南十字星を愛でるメールが私に送信されてきた。私は、夜空を眺めながら南国のビーチで心地良い風に吹かれ、東京では決して味わうことの出来ない「夢のような幸福感」に包まれた。私は、その時一生ここにいたいと思ったが、現実の世界ではそうすることも叶わず、今東京という大都会の真っただ中で、昔日の日々を懐かしむばかりだ。
エルフより許可を得て転載
話は変わるが、「エルフ」という言葉を聞いたことがおありだろうか。まだ、一般の方には馴染みのない言葉だが、私の友人が運営する「料理に関する一般社団法人」のことだ。Elf(エルフ)とはeducation for life and foodの頭文字からとられた様々な「食に関する団体」だ。日本全国の「食」を営むスペシャリストで、何代も続く老舗和菓子店などが会員となっている。毎月のエルフ通信を発行しており、その26号から29号(2021年11月~2022年1月)までフィリッピン料理がきれいな写真入りで掲載された。私の家内が、ミンダナオ出身であることから、私の店で提供している菓子や料理が現地の写真とともに紹介されていて、大変興味深いものだった。ここで紹介されていたフィリッピン料理は、十数年前に日本でパブが流行していた当時、これらの料理が食べられるレストランが多く存在していたが、現在ではその大部分が消滅し、現在はフィリピンの食材を販売する店が点在しているのみだ。
これは、タイやベトナム等の他の東南アジア料理店と比べると、極めて残念なことだ。それでは、日本人の口に合わないからこうなったのであろうか。決してそうではないと思う。失礼を承知であえて言うならば、フィリッピン料理は他の国の料理に比べ、インパクトが薄いのではないかと思われる。美味しいけど、印象が薄過ぎて記憶に残らない味はあると思う。フィリッピン料理の良さは、誰にでも食べやすいことなので、この点をもっと長所として強調していくことが重要だと思う。
フィリッピン料理が、南半球の十字星と同じように、小粒ながらもきらきらと輝き、これからの世界料理の一つの指標になることを、切に願うばかりである。
フィリッピン料理が、南半球の十字星と同じように、小粒ながらもきらきらと輝き、これからの世界料理の一つの指標になることを、切に願うばかりである。