東南アジアの⾷に関するコラム



知っていて損はない珈琲豆の精製方法
2023.07.03
2023年23号コラム
皆さんが飲まれている珈琲は、一体珈琲の木のどの部分から珈琲の成分を抽出して飲まれているかご存じでしょうか?珈琲はミルで粉状にした珈琲豆に湯を濾過して抽出しているから、きっとその珈琲豆がどこから採るのかという点で既にお分かりでしょう。通常、コーヒーノキは白い花を咲かせた後、コーヒーチェリーの実をつけます。その綺麗な写真は極めてポピュラーなのできっとどこかでご覧になったことがあると思います。そのサクランボのようなコーヒーチェリー(注:緑色から熟してくると赤色に変色します)の中にある種子(生豆)が珈琲豆です。この種子を焙煎すると、茶褐色に変色し、香ばしい珈琲豆になります。
もう少し詳しく説明しますと、コーヒーチェリーの種子(生豆)は、外側から、「外皮、果肉、粘液質(ミューシレージ)、パーチメント、シルバースキン」と5つから成る層に包まれています。コーヒー豆を精製するというのは、この外側から4つ目にある「パーチメント」までを生産地で取り除くことを言います。
主に生産地で行われる精製方法までは、珈琲を飲むのに関係ないだろうと思われる方に、私がここでお伝えしたいことは、これらの精製方法によって、珈琲が最終的に皆さんの口に運ばれた時に感じる味わいに多いに関わってくるので、これを知っていて決して損はないと言うことです。
もう少し詳しく説明しますと、コーヒーチェリーの種子(生豆)は、外側から、「外皮、果肉、粘液質(ミューシレージ)、パーチメント、シルバースキン」と5つから成る層に包まれています。コーヒー豆を精製するというのは、この外側から4つ目にある「パーチメント」までを生産地で取り除くことを言います。
主に生産地で行われる精製方法までは、珈琲を飲むのに関係ないだろうと思われる方に、私がここでお伝えしたいことは、これらの精製方法によって、珈琲が最終的に皆さんの口に運ばれた時に感じる味わいに多いに関わってくるので、これを知っていて決して損はないと言うことです。
代表的なコーヒー豆の精製方法は、従来から「ウォッシュド(水洗式)」、及び「ナチュラル(注:ひとにより「非水洗処理方法」又は「乾(燥)式」とも呼びます)」があります。この2つの精製方法の違いは、果肉を除去してから乾燥させる(ウォッシュド)か、取らずにそのまま乾燥させる(ナチュラル)かの違いにあります。
現在最も広く使われている精製方法は、ウォッシュド(水洗式)です。タイ、ベトナムで私が訪れた精製工場でも、かなり大規模な設備を用いて、ウォッシュド精製が行われていました。最初に果肉除去機等を使って果肉を除去しますが、ミューシレージ(粘液質)はまだ強くコーヒーチェリーに粘着しています。これを簡単に洗い落とすのは極めて難しいので、水を貯めた発酵層の中で1~3日間漬けておきます。その間に微生物が反応して、糖分を水や二酸化炭素に分解します。こうして「発酵」によって取り除かれた粘液質(ミューシレージ)は、大量の水を使い、更にきれいに洗い流されますが、私が訪れた工場では、野外にあった発酵槽から、これらの果肉などの腐った汚水がまだ清掃もされていなかったため、あたりを悪臭が充満していました。
いくつもの発酵槽から、洗い流された珈琲豆は、その比重の差(注:欠点豆は軽く、十分に熟した豆は重い)を用いて、自動選別されます。この後、水分を多く含んだ生豆は、乾燥棚に広げられて乾かされ、水分量が10%ぐらいになるまで乾かされます。
ウォッシュド(水洗い式)精製方法は、欠点豆が出るリスクが比較的少なく、均一性のとれた質の高いものを大量に生産することができます。他方、発酵槽で、大量の水を必要とし、汚水を排水することで、地域への環境負荷が大きいというが、近年では濾過装置を用い排水を浄化してから、流すなどの工夫がなされています。また、出来た珈琲豆の風味や味わいについては、重要な工程である発酵させることによって、豆ごとに個性があるオレンジや桃のようなフルーツの風味が生まれると言われています。この発酵は一見簡単そうですが、気温が高いほど発酵は早く進み、低いほどゆっくり進むので、珈琲豆の状態を見ながら発酵の止め際を慎重に見極めなければなりません。これには、棒で発酵層の豆の中に差してその感触で判断したり、舐めてみて味で判断したり、測定器などで計ったりして、正に職人技です。その結果、発酵が不十分だとミューシレージが除去することができずに風味は単調になり、逆に、発酵をし過ぎるとアルコールやビネガーのように酸味が鋭くなり、飲んだ後の後味が極めてドライな印象になってしまいます。これは、昔からワインに例えてウォッシュドは果肉が取り除かれた状態で乾燥されるため、きれいな酸やクリアな味わいが特徴の「白ワイン」、他方、ナチュラルは「赤ワイン」にたとえられています。
この「赤ワイン」に例えられている「ナチュラル(非水洗式)」精製方法は、収穫したコーヒーチェリーの果肉を取らず、そのまま天日干し(乾燥)にした後、脱穀機によって種子(生豆)を取り出す昔ながらのシンプルな精製方法です。これは、果肉を残したまま乾燥させるため、果肉の香りや甘みが生豆にしっかりと染み込み、果実味のフレーバー(フルーツのような甘酸っぱさと香り)があふれてくるのが特徴的です。この精製方法は、主にエチオピアやブラジル、イエメンで用いられており、私は数年前フィリッピンのアポ山の標高7~800mぐらいにある麓地域で、農家に見せてもらいました。農家に言わせると、この精製方法は、気候の影響を大変受けやすいが、大量の水を必要としないので、険しい山岳地帯のような地域でも精製が可能であるとのことです。但し、天日干しの際、均等に陽光があたるようにコーヒーチェリーを3週間ぐらい丁寧に転がさないと腐敗やひび割れが生じ、品質の高いコーヒー豆はのぞめないとのことです。このように、ナチュラル精製方法は、ウォッシュドに比べると精製が難しく、欠点豆が混ざりやすいので余計に手間がかかりますが、収穫後果肉をつけたままの状態が長く続くので、熟したベリー系の果実感、スパイス感、芳醇さ等独特の香りと味わいのある珈琲豆になります。
現在最も広く使われている精製方法は、ウォッシュド(水洗式)です。タイ、ベトナムで私が訪れた精製工場でも、かなり大規模な設備を用いて、ウォッシュド精製が行われていました。最初に果肉除去機等を使って果肉を除去しますが、ミューシレージ(粘液質)はまだ強くコーヒーチェリーに粘着しています。これを簡単に洗い落とすのは極めて難しいので、水を貯めた発酵層の中で1~3日間漬けておきます。その間に微生物が反応して、糖分を水や二酸化炭素に分解します。こうして「発酵」によって取り除かれた粘液質(ミューシレージ)は、大量の水を使い、更にきれいに洗い流されますが、私が訪れた工場では、野外にあった発酵槽から、これらの果肉などの腐った汚水がまだ清掃もされていなかったため、あたりを悪臭が充満していました。
いくつもの発酵槽から、洗い流された珈琲豆は、その比重の差(注:欠点豆は軽く、十分に熟した豆は重い)を用いて、自動選別されます。この後、水分を多く含んだ生豆は、乾燥棚に広げられて乾かされ、水分量が10%ぐらいになるまで乾かされます。
ウォッシュド(水洗い式)精製方法は、欠点豆が出るリスクが比較的少なく、均一性のとれた質の高いものを大量に生産することができます。他方、発酵槽で、大量の水を必要とし、汚水を排水することで、地域への環境負荷が大きいというが、近年では濾過装置を用い排水を浄化してから、流すなどの工夫がなされています。また、出来た珈琲豆の風味や味わいについては、重要な工程である発酵させることによって、豆ごとに個性があるオレンジや桃のようなフルーツの風味が生まれると言われています。この発酵は一見簡単そうですが、気温が高いほど発酵は早く進み、低いほどゆっくり進むので、珈琲豆の状態を見ながら発酵の止め際を慎重に見極めなければなりません。これには、棒で発酵層の豆の中に差してその感触で判断したり、舐めてみて味で判断したり、測定器などで計ったりして、正に職人技です。その結果、発酵が不十分だとミューシレージが除去することができずに風味は単調になり、逆に、発酵をし過ぎるとアルコールやビネガーのように酸味が鋭くなり、飲んだ後の後味が極めてドライな印象になってしまいます。これは、昔からワインに例えてウォッシュドは果肉が取り除かれた状態で乾燥されるため、きれいな酸やクリアな味わいが特徴の「白ワイン」、他方、ナチュラルは「赤ワイン」にたとえられています。
この「赤ワイン」に例えられている「ナチュラル(非水洗式)」精製方法は、収穫したコーヒーチェリーの果肉を取らず、そのまま天日干し(乾燥)にした後、脱穀機によって種子(生豆)を取り出す昔ながらのシンプルな精製方法です。これは、果肉を残したまま乾燥させるため、果肉の香りや甘みが生豆にしっかりと染み込み、果実味のフレーバー(フルーツのような甘酸っぱさと香り)があふれてくるのが特徴的です。この精製方法は、主にエチオピアやブラジル、イエメンで用いられており、私は数年前フィリッピンのアポ山の標高7~800mぐらいにある麓地域で、農家に見せてもらいました。農家に言わせると、この精製方法は、気候の影響を大変受けやすいが、大量の水を必要としないので、険しい山岳地帯のような地域でも精製が可能であるとのことです。但し、天日干しの際、均等に陽光があたるようにコーヒーチェリーを3週間ぐらい丁寧に転がさないと腐敗やひび割れが生じ、品質の高いコーヒー豆はのぞめないとのことです。このように、ナチュラル精製方法は、ウォッシュドに比べると精製が難しく、欠点豆が混ざりやすいので余計に手間がかかりますが、収穫後果肉をつけたままの状態が長く続くので、熟したベリー系の果実感、スパイス感、芳醇さ等独特の香りと味わいのある珈琲豆になります。
上記2つの精製方法以外にパルプド・ナチュラル(ハニープロセス)、及びスマトラ式と呼ばれる更に2つの精製方法があります。
パルプド・ナチュラル(半水洗式)精製方法は、ウォッシュドとナチュラルの中間にあるようなイメージで、主にブラジルで行われています。また、ハニープロセス精製方法は、水洗い(ウォッシュド)精製方法と同様で、コスタリカやパナマ等の中米地域で行われています。
珈琲豆の果肉は最初に除去されますが、この後発酵槽に入れて粘液質は取り除くことはされず、すぐに天日干しします。すぐに天日干しによって珈琲豆の粘液質が持つ糖分や酸味が生豆に染み込み、甘みや透明感が感じられるほどよい果実(風)味と甘さをもつ味わいに変化します。
また、最後の「スマトラ式精製方法」は、その名の通り、インドネシアのスマトラ島などの一部の地域で行われており、この地域は、雨が多い土地柄のため、乾燥期間を短くするために考案された方法です。コーヒーチェリーの果肉と粘液質(ミューシレージ)を除去した後で、生乾きの状態でパーチメントなどの被覆物を除去し、種子の状態で本格的な乾燥をさせる方法です。スマトラ式で生産された珈琲豆は、古くから「マンデリン」として親しまれ、唯一無二の独特な味わいと風味を醸し出しているため、なめし皮とも、森の湿った土とも、またビターアーモンドやハーブやトロピカルフルーツなどの風味に近いとされ、非常に人気の高いコーヒーです
上記4つの精製方法でどれが一番良いということはありません。珈琲豆の生産地に見合った風土や気候、生産規模、生産者など全ての環境にマッチした最適の方法で精製されているので、我々消費者は、この珈琲豆は、この精製方法で生産され、出荷されたという基本的な情報に基づいて、産地ごとに珈琲独特のフレーバー(香りや味わい)を堪能すれば、より格別な「珈琲の風味・味わい」が得られると思います。
パルプド・ナチュラル(半水洗式)精製方法は、ウォッシュドとナチュラルの中間にあるようなイメージで、主にブラジルで行われています。また、ハニープロセス精製方法は、水洗い(ウォッシュド)精製方法と同様で、コスタリカやパナマ等の中米地域で行われています。
珈琲豆の果肉は最初に除去されますが、この後発酵槽に入れて粘液質は取り除くことはされず、すぐに天日干しします。すぐに天日干しによって珈琲豆の粘液質が持つ糖分や酸味が生豆に染み込み、甘みや透明感が感じられるほどよい果実(風)味と甘さをもつ味わいに変化します。
また、最後の「スマトラ式精製方法」は、その名の通り、インドネシアのスマトラ島などの一部の地域で行われており、この地域は、雨が多い土地柄のため、乾燥期間を短くするために考案された方法です。コーヒーチェリーの果肉と粘液質(ミューシレージ)を除去した後で、生乾きの状態でパーチメントなどの被覆物を除去し、種子の状態で本格的な乾燥をさせる方法です。スマトラ式で生産された珈琲豆は、古くから「マンデリン」として親しまれ、唯一無二の独特な味わいと風味を醸し出しているため、なめし皮とも、森の湿った土とも、またビターアーモンドやハーブやトロピカルフルーツなどの風味に近いとされ、非常に人気の高いコーヒーです
上記4つの精製方法でどれが一番良いということはありません。珈琲豆の生産地に見合った風土や気候、生産規模、生産者など全ての環境にマッチした最適の方法で精製されているので、我々消費者は、この珈琲豆は、この精製方法で生産され、出荷されたという基本的な情報に基づいて、産地ごとに珈琲独特のフレーバー(香りや味わい)を堪能すれば、より格別な「珈琲の風味・味わい」が得られると思います。