東南アジアの⾷に関するコラム

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珈琲と調和する音楽は何か?

2023.06.20
2023年19号コラム
「池福朗★珈琲店」は、池袋駅から7分程歩いた場所にある。池袋は子供の頃から住み慣れた町で、幼い頃から今日までのこの町の発展をずっと見続けてきた。昔駅の近くに、お城のような洋館のクラシック喫茶があったし、今でも、私の友人がジャズ喫茶をサンシャインビルの近くで経営している。また、私の学生時代には、名前を聞けば思い出す方も多いだろう「マイアミ」とか「ロビー」とかいう、薄暗い雰囲気の喫茶店で、朝には珈琲にトーストとゆで卵がついたモーニングセットを提供し、多くの人が新聞を読みながら、朝食をとっていた。そのうち、ファーストフードやコンビニが低価格の珈琲を売るようになり、珈琲チェーンは乱立するも、浮き沈みの激しさから撤退した店も多い。
クラシック喫茶や、ジャズ喫茶では、そのものの音楽をBGMとして常に流していたが、大方の喫茶店はなぜかボサノバ音楽が主流だったように思う。確かに、日本の演歌や歌謡曲では珈琲を飲む雰囲気には合わない気がする。私は、若かりし頃、学生として、だいぶ長くパリに滞在していた。フランスはシャンソンの国だが、むしろ、カフェではブラジル音楽がながれていることが多かった。それでは、東南アジアはどうであろうか。最近ではエアコンのあるカフェも増えているが、昔からオープンエア・タイプのカフェが根強く、音楽よりもむしろテレビなどでスポーツの実況中継が流れていたようだ。カンボジアでは、人気が高かった「日本のプロレスやら釣り番組」が流れていた印象が強い。ベトナムの喫茶店は、規模が大きく、店内に岩ブロックのちょっとした池が設置されていて、水が上方から下方へと流れて雰囲気を盛りあげているものが多かった。いずれにしても、客は珈琲を飲んで、居心地の良い空間で長居するのが目的なのだろう。
 私個人の印象から言えば、若い頃からファンだったボサノバ歌手であるアストラッド・ジルベルト(注:最近亡くなられたとの訃報に接した)が歌う「イパネマの娘」がBGMに流れていれば、この上なく、くつろいで珈琲が飲めると感じている。
  いずれにしても音楽は、珈琲の味と同様に個人の好みによってだいぶ異なるので、珈琲に合う音楽をこれだと一般化するのは至難の技だろう。