東南アジアの⾷に関するコラム

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東南アジア諸国のミステリアスな国境の町

2023.07.24
2023年32号コラム
東南アジア諸国のミステリアスな国境の町

タイーミャンマーの国境の町

東南アジアの国々を移動する場合、国境の町を通過することが多い。移動手段を飛行機にすると、国境の町を見ることが出来ないので、わざわざ長距離ローカルバスを使ったり、汽車で国境に近い町で降車し、国境までタクシーなどを使い、歩いて国境越えをしたりもする。そんな乗り換えの労など厭わないぐらい、東南アジアの国境の町はミステリアスで、面白い。
長距離バスの国境越えだと、都市から都市なので、国境近くで荷物を持たされ、国境を各自歩いて渡る。当然、パスポートと荷物などの出入国検査を自分で終えて、国境の反対側で乗ってきたのと同じバスを待ち、乗り込む。したがって、国境にある小さな町をあまり楽しむことはできない。そんなに簡単に通過してしまうには、国境の町は見るべきものが沢山あり過ぎて、これではもったいない。それでは、国境の町の何が私を引き付けるのだろうか。これから、その楽しみを解き明かしてみたい。
まず、国境は道路の分岐点だ、二つの国のカルチャーの交差点だから面白い。二つの国が交わる交易地点では、双方の国で価値観が異なる物の流れが滞留している。小さな商店が軒を連ね、その店先には多くの物が叩き売りでもするかの如く積み上げられている。多くの人が自国に帰る前に、土産などを物色している。そこには、完全なまやかしものも多い。二足三文のものでもさも極めて高価なものであるかの如く、好奇の目を引きつける。最近では、国境の町に大きなホテル、免税店、カジノがあったりすることがある。
昔ながらの国境の町は、例えば、タイとミャンマーの国境にあるタチレクがる。美しい川沿いに小さなホテルが沢山あり、二国間の物価がかなり違うため、毎日行商人が行きかっている。要するに、人間の深層心理の奥底にある「金に対する欲望(金銭欲)」が、ここでは明らかに町中から噴出しているのが見てとれる。それが、私には面白いと感じられるのだ。行き交う人が、だますか、だまされるか、どちらにまわるか。そうした世界は、結構ミステリアスで、ちょっとした映画の一齣のような側面もある。マレー半島のシンガポールからベトナム国境あたりまで、実際に私が赴いた国境の町を2~3の町を列挙すると以下の通りだ。
・シンガポールとマレーシアの国境にある「ジョホ-ルバル」だ。例のサッカー史上に残る「ジョホ-ルバルの奇跡」が起きた、と言われている町だ。結構大きな町で、両国の給与賃金格差のせいで、毎日国境越えして出稼ぎに行く人が多いので、通勤ラッシュが起こるが、夜中の通行はスムーズだ。
・マレーシアとタイ国境にあるスンガイコロークの町。両国の境が河で、国境は完全に徒歩でしか渡れない。両国の文化の違いがはっきりとみてとれる面白い国境の町だ。
・タイとカンボジアの国境の町「ポイペト」。私はバイク・タクシーの後部座席にまたがってタイ側からカンボジアに入った。最近では、カジノの町でも知られており、一見かなり発展しているようだが、異様に怪しい町だ。
  ・タイとカンボジアの国境の町、アランヤプラテートの町は、宝石特にルビーの交易の町だ。町には市場の内外に小さなルビーの売買のための店が多くある。私は宝石を鑑定する力はないから、スルーしたが、赤いルビーの不思議な魅力は高くても買いたくなるのも分かる気がする。
この他にも国境の小さな町は沢山訪れたが、国境の町に滞在し、両国の食べ物の食べ比べをした。また、長距離ローカルバスを利用するような場合にも、休憩兼夜食をとるため留まるドライブインの食事は、大抵バスの運賃に組み込まれているので、両国の味の違いが微妙にわかる。食事を現地の人達並みに食べることができるのも、ミステリアスな未知の世界に迷い込んだ気がしてくるので、バスの長距離旅行は、切符を買った瞬間から私はわくわくしてくる。私は、結構だまされやすいタイプの人間であるが、昔から眼光だけは鋭いので、これまでだまされる側にまわることはなく、つまり、国境の町で金儲けの対象とはならなかったので、自由に徘徊し、人間と物流の交差する様相を観察してきた。国境の町は、カジノに限らず人間の本性たる「欲望」の渦巻く町であるが、ご自分の旅を面白くするか、つまらないものにするかは自分次第なので、あくまでも自己責任で行かれることをお薦めしたい。特に、女性1人で国境の町に長居しようなどとは考えない方が賢明だということを最後に助言して置く。