東南アジアの⾷に関するコラム

フレーム花1
フレーム花2
フレーム花3

東南アジア・スィーツの甘い誘惑

2023.06.19
2023年16号コラム
東南アジアに数年滞在すると、周囲の人が満面の幸せそうな笑みを見せてくれるのは、独特の南国フルーツ(例えばドリアンやジャックフルーツ)が丸ごと目の前に並べられ、それを一斉に食べ始めようとすう瞬間であることが分かる。これは、巨大なスイカ、山盛りのマンゴー、また、リュウガン、パパイヤ、ライチ、ランブータン、さっぱりしたスター・フルーツ、瑞々しいドラゴンフルーツなどにも言える。
東南アジアはどこに行っても、「トロピカル・フルーツの天国(パラダイス)」とも言える。また、それぞれのフルーツが旬の時期にあたると、屋台、路上のあちらこちらで、フルーツが山盛りに並べられる。色彩豊かなフルーツによって正に天国にいるような気分になる。
東南アジア・スィーツの甘い誘惑

東南アジア諸国は、古くから、その熱帯地域特有の暑さから、とてつもなく辛い料理を食べ、終日ほてった体内の熱を発汗作用により、しばし冷却させてくれる。それでも、口内に残る「辛さ」の激しさを中和させるためには、南国フルーツのような甘いデザートは身体に不可欠である。デザートと言えば、フルーツ以外にも、卵、緑豆、米粉、もち米、蓮の実、パームシュガー、キャッサバの根、タピオカ、カボチャ、さつまいも、ココナッツ、ココナッツミルクなど様々なものを材料として作られ、カラフルで、豊富な種類のスィーツが置かれている。屋台では、客が数種類を選ぶと、器に盛り、混ぜ合わせて提供してくれる。
また、フィリピンでは、アイスクリーム、紫芋などが加わり、国民食ともいえる「ハロハロ」が、非常にポピュラーだ。他の東南アジア諸国でも、スィーツは料理の辛みから解放される国民の叡智の結晶として広まっていった。コーヒーが。東南アジアに広がり見せ始めた当初、甘さを全面的に強調した「タイコーヒー」や、フィリッピンでも、インスタントコーヒーの「3in1」や「ホワイト・コーヒー」が、今でも大方の家庭で一般に飲まれている。それは、食後の甘いフルーツやスィーツの延長線上にあるのかもしれない。
こうした甘い誘惑も、これを起因とする肥満や「万年病」を防止するため、近年幾分控えられる傾向にある。が、未だに根強い人気を誇っているのも事実だ。私達も、短期間の滞在であれば、現地の人々に倣って、超辛い料理を食した後、この甘い誘惑に誘われて、一時を忘れ、天国のような幸せな気分に浸ることもありかもしれない。