東南アジアの⾷に関するコラム

フレーム花1
フレーム花2
フレーム花3

南国に広がる椰子(ココナッツ)の光と影

2023.06.15
2023年12号コラム
南国に広がる椰子(ココナッツ)の光と影

マレーシアには、現在ヤシの木が広い範囲で整然と密集して耕作されている。この国は、かつて錫や天然ゴムの生産国として、世界中に知られていた。洗剤などの原料となる椰子油の需要が急速に高まり、次第に天然ゴムの木を駆逐するに至っている。天然ゴムの木の耕地面積が、ヤシの木にとって代われるように成り始めてからもう数十年が経過した。
多くの人は、椰子の実から出る甘くて、さらりとした果汁を口にしたに違いない。椰子の木のシルエットは、南国特有の情緒を育み、その果汁を飲料として使用するだけではなく、また、椰子の白い実は、そのままでも、ミルク状にしても多くのスィーツやら料理に使われる。しかし、未だに知る人ぞ知る、限られた人にしか知られていないが、椰子の実の花から採取される蜜を原料に、これを良く煮詰めて、乾燥状態にして製造させる「椰子砂糖」だ。この砂糖は、トウキビや、甜菜の原料として作られる通常の砂糖より、はるかに豊富なミネラル分を含有し、健康志向で優しい味がするので、とても珈琲に合う。
南国に広がる椰子(ココナッツ)の光と影

私は、若かりし頃(注:1970年代と記憶している)、上白糖の製造で有名な「三井砂糖」の工場を見学させていただいたことがある。その頃から、日本では、健康への配慮から砂糖を控えめに摂取することが一般に言われていたため、輸入・生産量は極端に減少してきていた。さて、それまでの世果中の砂糖の生産量は変わらないのに、こうして需要が極端に減るということは、他に「砂糖の使い道」を考えなければならない。当時、サンパウロで開催された「国際砂糖理事会」では、日本の大きな商社からも代表が参加していたが、これは、かなり深刻な問題として取り上げられていた。そこでは、将来的に石油に代えて、自動車や宇宙ロケットの燃料として使用することが真面目に紹介されていた。
南国に広がる椰子(ココナッツ)の光と影

他方、話は「椰子砂糖」に戻るが、数年前、私は、フィリッピンでこの椰子砂糖を生産し、日本に輸出するプロジェクトの支援を友人から持ち掛けられたことがある。現在、食品に対する健康志向の根強い日本で、この砂糖は、未だ十分に認知されておらず、これから徐々に広がるもの考えている。私も、苦みの強いフィリッピン珈琲と良くマッチし、優しく珈琲の「甘味」を引き立ててくれるので、この「椰子砂糖」をこれから広く宣伝しようと思っているところだ。