東南アジアの⾷に関するコラム

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フィリッピン人のソウル・テイストの旗手

2023.07.19
2023年27号コラム
今回のコラムの話題は、フィリピン料理のソウル・テイストなので、たかが6年間ぐらいフィリッピンに住んだくらいで、「知ったような顔するな」とフィリピン人の方の怒りを買うことになるかもしれない。フィリピン料理は多種多様で、どれもそんなに馬鹿辛くないし、少し甘めの食べやすいものだ。いろいろな食材を使って、調理の仕方も様々なので、そこからソウル・テイストは何か、と問われても生粋のフィリッピン人にはたった1つのフィリッピン料理のテイストをあげるのは不可能に近いだろう。私は生粋の100%日本人だからこそ、6年間毎日フィリッピン料理をあれこれ食べてあげくに、敢えて恐れず言ってしまうのかもしれない。
結論から言ってしまうと、それは、フィリッピンで有名なハンバーガー・チェーン店「ジョリビー」のトマトソースにトロピカル・バナナのエッセンスと砂糖を加え作られた独特なソースの味が、正しく「ソウル・テイスト(味)」なのだと思う。世界中にジョリビーは1300以上の店舗を運営(注:2019年)しており、その内の1,130店はフィリピン国内にあり、234店はフィリピン国外の、アメリカ、香港、ベトナム、インドネシア、ブルネイ、サウジアラビア、カタール、クウェート、シンガポール、バーレーン、UAEに支店を構えている。
日本では「マクドナルド・ハンバーガー店」が多くの店舗を構えているが、フィリッピンでも同様に多い。だが、この国で「ジョリビー」は、マクドナルドの独占を決して許さない。フィリッピンでも、もちろん「マクドナルド」が極めて人気のあるバーガーショップであることに間違いない。だが、ジョリビーには、「マクドナルド」を凌ぐ熱狂的な支持者が多い。
  その大きな理由な一つは、ジョリビーの商品メニューにはどれをとっても、このソウル・ソースがベースに使われている。ヤムハンバーガーだけでなく、チキンサンドイッチ、ホットドッグ、ジョリースパゲティーなど、どれを注文しても、このソースがベースとして商品が開発されている。その理由は、フィリッピン料理の根底にあるソウル・テイストが正(まさ)しくこれだからに相違ない。
  フィリッピン人は子供の頃から、親兄弟と一緒にジョリビーに頻繁に食べにいく。また、誕生日パーティーなども、ジョリビーだと皆大喜びで友達一緒に祝って盛り上がる。それほど、子供の頃から、ジョリビーのソウル・テイストに馴らされており、子供の時の喜びは決して忘れられない。フィリッピン人は、大人になって、他の料理を作る時も、このジョリビーのソウル・テイストを基本に作る。子供の頃一度味を占めたテイストは、大人になっても変わらないのだ。
  本コラムで私が書いたことに怒るフィリッピン人の方がいるかもしれないが、逆に賛同される方も多いと思う。要するに、こうした考えを契機として、フィリッピン料理とは何か、フィリッピン人のソウル・テイストは何かと考える機会が得られれば良いと、私は思っている。