東南アジアの⾷に関するコラム

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フィリッピン・ミンダナオ島の熱帯農業にかける情熱

2023.07.28
2023年38号コラム
島嶼国フィリッピンのマニラ空港から、飛行機で南の赤道方向へ2時間程飛ぶとミンダナオ島のダバオ空港に到着する。ミンダナオ島は、熱帯地域に位置するため、1年中を通じてかなり高温多雨で、空港に降り立つと空気が陽炎のように揺らいでいる。この地で雨季といっても、毎晩7~8時ころ雨が、暗い空から滝が落ちてくるように降り、やがて豪雨になり、道路が冠水する。が、その翌朝には、何事も無かった如く道路から水が引いており、こうしたことが毎日のように繰り返される。
  このミンダナオ島のダバオ市で、私は仕事の関係で4年間ほど居住した。私が居住する、はるか以前から、この地で熱帯農業に携わり、日本向けに商品を出荷し、現地農家を何十年も指導し、農作物を買い上げる等して、商売をなさってきた「日本人」の方がいらっしゃる。私は、この方を「熱帯農業」のレジェンドと仰ぎ、尊敬してきた。
実際、南北回帰線にはさまれた熱帯性気候の下、過酷な条件下に営まれる「熱帯農業」は、一般農業に比べると、かなり特殊な農業技術を要する。この熱帯域には、豪雨、害虫、日照り(旱魃)等の「天敵」がたちはだかり、農業従事者にとっても、脱水、日射病、疫病やらと常に戦い続けながらの作業が強いられる。それでも、何十年、否何百年もの昔から人々は、この地で熱帯農業を営んできた。その農業従事者の先頭に何十年間も立ち続け、様々な問題を乗り越えてきたこの「熱帯農業」の神様のような日本人に、私は決して頭が上がらない、と思っている。
熱帯農業技術も日々邁進しており、今日では、十分な収穫量が確保されるようになってきたが、ダバオ港や、島の反対側にあるカガヤンデオーロという港町等からコンテナ船で、日本を含めアジア各国に定期的に出荷するようになるまでは、高度な管理技術が必要であると思われ、その道筋を作るまでに多くの人の苦労を要したものと考えられる。
 そこまでの道筋を作りあげた維持・管理能力並びに生産技術力等を、後世に残す取り組み(組織)を、今しっかりと残していかない限り、ミンダナオ島の熱帯農業をこれまで以上に発展させることはできないと考えられる。現在、私はミンダナオ島からかなり離れた場所で、この行く末を案じる他ないが、唯一、私が同地に滞在中に、発足に協力した「ミンダナオ日本人商工会議所」などが是非とも中心になって、このミンダナオ島の熱帯農業の発展に情熱を傾け、これを維持してゆかれることを祈るばかりである。